就労ビザの取得について
就労系ビザとは、日本に在留して就労するためのビザ(在留資格)になります。仕事の内容によって、その資格が分かれています。
ここでは、主な5つの資格について、仕事(活動)の内容についてポイントとなる点について解説しています。これから就こうとしている仕事が、在留資格毎に定められた仕事(活動)の内容に当てはまる仕事でなければ許可は受けられません。逆に言うと、どの在留資格であれば、これから就きたい仕事に合致した資格になるのか、そもそも当てはまる在留資格があるのか、この点が、在留資格を申請しようとする際には、まず考えなければなりません。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、例えば語学を専攻した外国語大学を卒業した者が、「翻訳、通訳」業務を行おうとする場合や、経済学を専攻して大学を卒業した者が「海外取引業務」に従事しようとする場合、いずれも「技術・人文知識・国際業務」が許可されます。
このうち、「技術」については、システムエンジニア、プログラマ―、航空機の整備、精密機械器具や土木・建築機械などの設計・開発などの技術系専門職が該当します。
「人文知識」は、経理、金融、総合職、会計、コンサルタント等の文科系の専門知識を必要とする活動です。
「国際業務」は、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、デザイン、商品開発など外国文化に基盤を有する思考又は感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする活動です。
これらの3つのカテゴリーは、許可要件、上陸基準が異なります。
学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的技術又は知識を必要とする活動又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする活動でなければいけません。
ただし、在留資格としては、「技術・人文知識・国際業務」として一つです。従って、「人文知識」のカテゴリーで許可を得た場合でも、在留資格の該当性の及ぶ活動範囲は、「技術」および「国際業務」のいずれも含まれますので、「技術」および「国際業務」の活動を行ったとしても、資格外活動には当たりません。(虚偽申請があった場合はこの限りでありません)
◆コンピュータソフトウェア開発の業務
本国において工学を専攻して大学を卒業し,ゲームメーカーでオンラインゲームの開発及びサポート業務等に従事した後,本邦のグループ企業のゲーム事業部門を担う法人との契約に基づき,月額約25万円の報酬を受けて,同社の次期オンラインゲームの開発案件に関するシステムの設計,総合試験及び検査等の業務に従事するもの。
なお、このように、一般には、理科系の技術の分野になりますが、文科系の科目を専攻して大学を卒業し(例えば、会計学など)、この科目の知識を必要とするコンピュータソフトウェアを開発する業務に従事する場合は、「技術」ではなく「人文知識」に該当します。従って、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得できます。 つまり、理科系の大学を卒業していなくても、コンピュータソフトウェアを開発する業務に従事することができる場合があります。
◆通訳・案内、語学指導
経営学を専攻して本邦の大学を卒業し,本邦の航空会社との契約に基づき,月額約25万円の報酬を受けて,国際線の客室乗務員として,緊急事態対応・保安業務のほか,乗客に対する母国語,英語,日本語を使用した通訳・案内等を行い,社員研修等において語学指導などの業務に従事するもの。
または、本国の大学を卒業した後,本邦の語学学校との契約に基づき,月額約25万円の報酬を受けて,語学教師としての業務に従事するもの。
◆ホテルのフロント業務
本国の大学を卒業して、ホテルのフロント業務、外国人観光客のホテル内施設の案内業務に従事しようとする場合、状況によって許可・不許可のいずれもあり得ます。
・客の荷物運搬やなどの単純就労が主たる業務になっている・・・単純労働として不許可の可能性高い。
・外国人客の対応のための通訳業務が主たる業務である・・・国際業務として許可の可能性高い。(ただし、ホテルの規模、外交人客の人数なども考慮され、外国人客の数が、一日を通じてそれほど無いのであれば、主たる業務とみなされず不許可の可能性がある)
◆本邦の公私の機関
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、本邦の公私の機関との契約に基づいて行う資格です。
1)ここで機関とは、公益法人、民間会社、外国法人の日本支店などですが、個人経営も含み
ます。
2)契約の形態としては、雇用のほか、委任、委託、嘱託、派遣も含みます。派遣契約の場合
は、派遣元(雇用主)の業務ではなく、派遣先での業務が在留資格に該当するかどうかで
判断されます。
◆不許可の事例
1.本国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が,本邦の旅館において,外国人宿泊 客の通
約業務を行うとして申請があったが,当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請
人の母国語と異なっており,申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは
認められないことから不許可となったもの
2.本邦の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務等を専攻し,専門士の称号を付与
された者が,本邦のホテルとの契約に基づき,フロント業務を行うとして申請があったが,
提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や
客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ,これらの「技術・人文知識・国
際業務」の在留資格には該当しない業務が在留期間の大半を占めることとなるため不
許可となったもの
「経営・管理」の在留資格
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)。
該当例としては,企業の経営者,管理者などです。
・従来、外資系企業(外国人または外国企業が出資)における経営・管理活動に限定されてい
ましたが、平成26年に日系企業(外国人または外国企業が出資していない企業)の経営・管
理の活動が認められています。
外国人の申請者による出資が必ずしも必要ではなくなっています。(ただし、審査において
は、重要な判断要素になります。)
・事業の経営の活動とは、例えば、社長、取締役、監査役等の活動を意味しますが、監査役
は、慎重に審査されます。
なお、事業の経営又は管理に実質的に参画する者としての活動ですので,役員に就任してい
るということだけでは,当該在留資格に該当するものとはいえません。
発行済株式の過半数を取得して代表取締役に就任するような場合は、経営・管理を行うと判断される可能性が高いですが、議決権の無い株式を取得して取締役に就任したような場合は、経営を行うと判断されない可能性があります。
・事業の管理に従事する活動とは、部に相当する内部組織の管理的業務とされ、部長、工場
長、支店長等の活動を意味します。
共同出資・共同経営
共同で事業を起こした複数の外国人がそれぞれ役員に就任するような場合には,それぞれの外国人が従事しようとする具体的な活動の内容から,その在留資格該当性及び上陸基準適合性を審査することとなります。
また,複数の外国人が事業の経営又は管理に従事するという場合,それぞれの外国人の活動が「経営・管理」の在留資格に該当するといえるためには,当該事業の規模,業務量,売上等の状況を勘案し,事業の経営又は管理を複数の外国人が行う合理的な理由があるものと認められる必要があります。
平成27年に考え方が公表されています。
それぞれの外国人全員について,「経営・管理」の在留資格に該当するとの判断が可能といえる要件は、
(1)事業の規模や業務量等の状況を勘案して,それぞれの外国人が事業の経営又は管理を行う
ことについて合理的な理由が認められること
(2)事業の経営又は管理に係る業務について,それぞれの外国人ごとに従事することとなる業
務の内容が明確になっていること
(3)それぞれの外国人が経営又は管理に係る業務の対価として相当の報酬額の支払いを受ける
こととなっていること等の条件が満たされている場合となっています。
事例1
外国人2名がそれぞれ500万円出資して,輸入雑貨業を営む資本金1000万円の会社を設立した。
2名はそれぞれ、通関手続・輸出入業務等の海外取引及び品質・在庫管理・品質管理の専門家である。
2名はそれぞれの専門性を活かして業務状況を判断し,経営方針については,共同経営者として合議して決定している。
報酬は,事業収益からそれぞれの出資額に応じた割合で支払われることとなっている。
他の在留許可との関係
・「法律・会計業務」の在留資格
弁護士、公認会計士等で、企業に雇用され、その専門知識をもって、経営・管理に従事する場合は、「経営・管理」の在留資格に該当します。「独占業務」として法律業務や会計業務を行う場合は、「法律・会計業務」の在留資格に該当します。
・「医療」の在留資格
医師の資格を持つ者が、病院の経営者として経営する活動は、「医療」ではなく、「経営・管理」の在留資格に該当します。
「企業内転勤」の在留資格
「企業内転勤」の在留資格とは以下をいいます。
「本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が,本邦にある事業所に期間を定めて転勤して,当該事業所において行う理学,工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動(在留資格「技術」に相当)若しくは法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務に従事する活動(在留資格「人文知識・国際業務」相当)。」
該当例としては,外国の事業所からの転勤者が該当します。
日本の法人に、海外にある関連会社である現地法人と雇用契約を結んでいる外国人が転勤してくる場合が典型的ですが、ほかにも、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の要件を満たさない外国人が、海外の関連会社で1年以上勤務してから日本の法人で勤務するような場合もあり得ます。
留意点
「本邦に本店,支店その他の事業所」
@外国企業、日本企業のいずれも、その日本での事業所は該当します。
ただし、外国会社は日本において登記をしていることが必要です。(日本国の営業所である場合には、当該営業所が登記されていること)
また駐在員事務所である場合は、登記ができないため、事務所の賃貸契約書などにより立証が求められます。
日本において安定・継続して事業を行っている事業所であることが必要であるためです。
A「本社」−「支社・支店」間のほか、
「親会社」−「子会社・孫会社」間
「子会社A」−「子会社B」間
「親会社」−「関連会社」間
「子会社」−「子会社の関連会社」間
の転勤を含みます。
※「関連会社」とは、「出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務及び営業又は事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の会社等」をいいます。
「公私の機関」
民間企業のほか、独立行政法人その他の団体も該当します。
「期間を定めて転勤」
起業内において、辞令などで期間が明記されていることが必要です。
「当該事業所において」
転勤した特定の事業所以外では活動はできません。
「高度専門職1号」の在留資格
「高度専門職1号」の在留資格は,我が国の学術研究や経済の発展に寄与することが見込ま れる高度の専門的な能力を持つ外国人の受入れをより一層促進するため,従来「特定活動」の在 留資格を付与して出入国管理上の優遇措置を実施している高度外国人材を対象として,他の一 般的な就労資格よりも活動制限を緩和した在留資格として設けられたものです。 「高度専門職1号」の在留資格は,就労資格の決定の対象となる範囲の外国人の中で,学歴・ 職歴・年収等の項目毎にポイントを付け,その合計が一定点数以上に達した人に許可されます。
【区分について】
「高度専門職」の在留資格は、1号イ、ロ、ハ及び2号の区分ごとにそれぞれ別々の在留資格として扱われます。従って、この在留資格の外国人が、別な区分の活動を行おうとする場合(例えばイの区分の在留資格を持っている方が、ロの活動をしようとするとき)は、在留資格変更が必要です。
高度専門職1号
下記、イ、ロ、ハのいずれかに該当する活動。併せて行う関連事業の経営。
イ(高度学術研究分野)・・・相当程度の研究実績のある研究者、科学者、大学教授
ロ(高度専門・技術分野)・・・医師、弁護士、情報通信分野等の高度な専門知識を
有する技術者
ハ(高度経営・管理分野)・・・相当規模の企業の経営者、管理者等の上級幹部
高度専門職1号は、各イ、ロ、ハにおいて、主活動と併せて関連事業を自ら行う活動ができます。
※ 詳しくは、下記の他の在留資格との比較を参照ください。
【高度専門職2号との相違:活動する機関】
・高度専門職1号の場合、活動する機関は、「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」。
・高度専門職2号の場合、活動する機関は、「本邦の公私の機関」。
(「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」ではありません。)
このため、活動する機関を変更した場合には、以下の手続きとなることに注意が必要です。
高度専門職1号での活動する機関を変更 → 在留資格変更許可
高度専門職2号での活動する機関を変更 → 所属機関変更届
【他の在留資格との比較】
1号イ
「教授」、「教育」との違い、「日本の公私の機関との契約に基づく研究・研究の指導若しくは教育をする活動」で、「教授」の在留資格と同様です。ただ、「教授」には、「日本の公私の機関との契約」は条件となっていません。
また「教授」、「教育」の在留資格は、活動の場が教育機関であるのに対し、「高度専門職」では教育機関に限定されていません。民間企業の社内研修での教育も該当します。
1号ロ
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の活動と類似していますが、高度専門職1号ロの在留資格では「国際業務」の内容は含まれません。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格では、「教授」,「芸術」,「報道」,「経営・管理」,「法律・会計業務」,「医療」,「研究」,「教育」,「企業内転勤」,「興行」,「介護」はその活動から除かれますが、高度専門職1号ロの在留資格では除かれません。
1号ハ
「経営・管理」の在留資格と類似ですが、「経営・管理」は、「法律・会計業務」の活動を行う資格えお有しなければ法律上行うことができない事業の経営・管理の活動を除くとされているのに対し。高度専門職1号ハでは除かれていません。従って以下のような活動も可能です。
・外国法事務弁護士の事務所の個人経営、外国公認会計士の事務所の個人経営(「法律:会計業務」としての活動に当たる)
高度専門職1号イ、ロ、ハに共通
主活動のほかに、関連事業の経営活動も認められるので、以下のような活動も可能です。
・1号ハの資格で、会社の役員を主活動として、同業他社の社外取締役を就任、または子会社を設立して経営
※だたし、主活動との間に関連性が必要ですから、主事業がIT、法務関係で関連事業が料理店などは認められません。
【高度専門職1号の適合の基準】
高度専門職とは、日本の経済活動に大きく寄与する高度な知識・技術を有する外国人を受け入れるための在留資格です。ポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置が講じられています。
高度専門職1号の適合基準は以下です。(高度専門職省令※)
1.ポイント制でのポイント合計値が70点以上
2.1号ロ、ハについては、最低年収が300万円以上
1号イについては、年齢により最低年収が区分されています。
(30歳未満→400万円以上、35歳未満→500万円以上、40歳未満→600万円以上、40歳以上→800万円以上)
※ポイント制
イ、ロ、ハごとの活動の特性に応じて、学歴、職歴、年収、研究実績、年齢、日本語能力などの項目毎にポイントを設定し、その合計点で判定する。
なお、在留期間中、継続してポイント合計点が70点以上を維持することまでは求められていませんので、年収が減少したりしてポイントが70点に満たなくなっても、直ちに在留できなくなることはありません。 もちろん、その場合には、在留許可更新は許可されません。
※高度専門職省令:「出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の高度専門職の候の下欄の基準を定める省令」
「高度専門職2号」の在留資格
高度専門職2号の在留資格は、前提として高度専門職1号の活動を行った者であるので、通常、初めて日本に上陸する際の在留資格には成り得ず、高度専門職1号、又は高度人材外国人としての「特定活動」からの在留資格変更からのみ可能です。
従って、上陸許可、在留資格認定証明書交付の対象になりません。
高度専門職2号
高度専門職1号の活動を行った者で、省令基準に適合する者が行う次の活動。
イ(高度学術研究分野)・・・相当程度の研究実績のある研究者、科学者、大学教授
ロ(高度専門・技術分野)・・・医師、弁護士、情報通信分野等の高度な専門知識を
有する技術者
ハ(高度経営・管理分野)・・・相当規模の企業の経営者、管理者等の上級幹部
注釈→上記のイ、ロ、ハは高度専門職1号のイ、ロ、ハと同様です。ただし、相違点がある
ので下記参照ください。
ニ(複合的活動)・・・イ、ロ、ハの活動と併せて行う活動。
注釈→「ニ」は、高度専門職2号のみの資格です。詳細は下記参照ください。
【高度専門職2号との相違:活動する機関】
・高度専門職1号の場合、活動する機関は、「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」。
・高度専門職2号の場合、活動する機関は、「本邦の公私の機関」。
(「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」ではありません。)
このため、活動する機関を変更した場合には、以下の手続きとなることに注意が必要です。
高度専門職1号での活動する機関を変更→ 在留資格変更許可
高度専門職2号での活動する機関を変更→ 所属機関変更届
【高度専門職2号との相違:関連事業の経営】
・高度専門職1号の場合、主活動に関連する事業を自ら経営できますが、イ、ロ、
ハのそれぞれに関連するもので、入れ子にはなりません。
・高度専門職2号の場合、イ、ロ、ハにそれぞれに関連する事業の経営は規定され
ておらず、「ニ」として併せて行うことのできる活動が規定されています。
具体的には「教授」,「芸術」,「報道」,「経営・管理」,「法律・会計業務」,「医療」,「研究」,「教育」,「企業内転勤」,「興行」,「介護」の活動をイ、ロ、ハと併せて行うことができます。
【高度専門職2号の適合基準】
高度専門職2号の適合基準は以下です。(高度専門職省令※)
1.ポイント制でのポイント合計値が70点以上
2.2号ロ、ハについては、最低年収が300万円以上
2号イについては、年齢により最低年収が区分されています。
(30歳未満→400万円以上、35歳未満→500万円以上、40歳未満→600万円以上、
40歳以上→800万円以上)
3.高度専門職1号の在留資格で3年以上活動を行っていたこと
4.素行が善良であること
5.日本国の利益に合すること
6.その者が日本において行おうとする活動が日本国の産業及び国民生活に与える影響等の観
点から相当でないお認める場合でないこと(変更基準省令※)
※高度専門職省令:「出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の高度専門職の候の下欄の基準を定める省令」
変更基準省令:「出入国管理及び難民認定法第二十条の二第二項の基準を定める省令」
参考記事