「日本人の配偶者等」の在留資格(結婚ビザ)について
結婚ビザ、配偶者ビザと言われることも多いのですが、正しくは、「日本人の配偶者等」の在留資格です。
「日本人の配偶者等」の在留資格は、日本人の配偶者だけでなく、日本人の子として出生した者または日本人の特別養子という身分・地位を有する者が該当します。
1.「日本人の配偶者等」の在留資格の特徴
「日本人の配偶者等」の在留資格の特徴を列挙すると以下のようになります。
在留中の活動の範囲に制限はありません。
日本に入国(上陸)する際の上陸許可基準はありません。
必ずしも配偶者又は親である日本人の扶養を受ける必要はありません。
(注)扶養を要件とする「家族滞在」と異なる点のひとつです。
「配偶者」とは、現に婚姻中であることを要します。相手方が死亡した場合、離婚した
場合は要件を満たさない。また、内縁の場合も要件を満たしません。
同居を要します。(特別な理由がある場合は別途)
経済的基盤は安定性及び継続性を基礎付ける要素があること
日本人の特別養子および日本人の子として出生した者も対象となります。
2.「日本人の配偶者等」の在留資格のの注意点
それでは、実際に「日本人の配偶者等」の在留資格を申請する際に注意しなければならない点について説明します。
1.日本人の配偶者の場合
日本人の配偶者の場合ですが、在留資格の該当性として、婚姻生活の安定性・継続性に問題がある場合(経済基盤の問題など)は、許可を得るのは難しくなります。
例:
◆日本人の夫が専業主夫で、外国人妻(申請人)が就労して生計を維持している場合 〇
◆日本人の夫、外国人の妻の両方とも無職・・・ ×の可能性大
「日本人の配偶者等」の在留資格は、社会通念上、夫婦の共同生活を営むといえるためには、同居して生活していることを要するとされています。しかし、何等かの事情があって同居していない場合には、その事情の説明とともに、在留資格該当性のあることを立証することが重要です。
例:
離婚調停中に、在留期間満了となるような場合には、「日本人の配偶者等」の在留資格更新を申請するか、離婚定住(告示外定住)として「定住者」の在留資格変更を申請するか?
・在留期間は「6月」になるものの、在留期間更新は認められることがあります。
・離婚成立前でも、「定住者」への在留資格変更は認められることがありまs。
いずれにしても、配偶者の身分を有する者の活動を継続して6ケ月以上行わないと、在留資格取消の対象となることには注意が必要です。在留資格取消にならないまでも、在留状況不良と判断されるため、以後に資格変更などを行った場合に、相当性において認められない可能性が高くなります。
経済的基盤は安定性及び継続性を許可の要件とはされていませんが、基礎付ける要素として判断されます。あまりにも欠如していると、日本人の配偶者の身分としての活動に疑義が生じ、不許可となる可能性があります。
同様に、交際期間や同居期間が著しく短い場合も、在留資格の該当性の要件を満たさないとされる可能性があります。
2.日本人の特別養子の場合
特別養子(原則、6歳未満)が対象で、普通養子は対象外です。
3.日本人の子として出生した者の場合
@「日本人の子として出生した者」とは、以下の場合が該当します。
・出生の時に、父または母のいずれかが日本国籍を有していた場合
・本人の出生前に父が死亡し、かつ、その父が死亡のときに日本国籍を有していた場合
※上記の場合に、出生後に、日本人である親が外国籍を取得するなどして、日本国籍を離脱した場合に、その子は生まれた時には「日本人の子として出生」しているので、「日本人の配偶者等」の在留資格の許可申請をすることができます。
A子」には、嫡出子のほか、認知された非嫡出子も含む。
B養子は含まない。
C本人の出生後に、父または母が日本国籍を取得しても、本人は「日本人の子として出生した者」に該当しない。
3.「日本人の配偶者等」の在留資格の申請方法
日本人の配偶者の在留資格の申請においては、いくつか注意すべきポイントがあります。
1.書面審査
@戸籍謄本
配偶者の離婚の有無、配偶者との間の実子の有無、養子縁組の有無、子の認知の有無など。
離婚・再婚のある場合、認知した子がいる場合などは、親子関係の信ぴょう性、さらには婚姻の信ぴょう性には慎重に判断されます。
配偶者の前戸籍、戸籍の附票なども必要となることがあります。
また、所定の「質問書」に記載した事項との整合性も審査されます。
A納税証明書
納税証明書と日本における住所(連絡先)が一致していること。
納税申告時に婚姻していた場合は、配偶者控除の有無について。(同控除がない場合は、同居しているかどうか、資格外就労の有無について慎重に審査されます。)
B身元保証書
配偶者が身元保証人になります。配偶者以外の者が身元保証人の場合は、申請人の親族であるか、その身元保証の意思・能力、身元保証人の納税証明書などが求められます。
C所定様式の「質問書」
申請人と配偶者が意思疎通可能な語学能力を有していること。
2.書面審査のほかに、実態面の調査
実態の調査が行われることがあります。
・配偶者の在職事実
・配偶者の前妻(前夫)の住所
・水道光熱費の契約状況、使用量
・電話(携帯電話)の契約状況 等
3.配偶者との年齢差
年齢差が大きい場合は、婚姻の信ぴょう性は厳格に判断されます。知り合った経緯、生活状況、交際の状況、婚姻することになった経緯などの詳細な説明をするとよいでしょう。
4.結婚相談所などの紹介の場合
この場合も、婚姻の信ぴょう性を裏付ける、交際の経緯、生活の状況、申請人が日本に訪れた回数、時期などを詳細に説明するとよいでしょう。親戚の上申書などがあるとよいでしょう。
5.申請人(外国人)が他の在留資格を有している場合
この在留資格申請時に提出した申請書の内容と齟齬がないか確認する必要があります。
4.離婚した後も日本に在留したい場合
離婚した後も日本に在留したい場合の方法は以下の方法で許可の可能性があります。
1.定住者へ在留資格を変更する
下記いずれかの要件を満たせば、「定住者」へ在留資格を変更することが可能な場合があります。
離婚定住と言われています。「定住者」の在留資格は就労活動に制限がありませんので、今までと同様に単純労働(アルバイト)を行うことも可能です。また、「定住者」の在留資格へ変更した後に、「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」の在留資格保有期間と通算して5年以上になれば、永住申請が可能になります(ただし、永住申請時に3年以上の在留期間を保持している必要があります)。
婚姻後、離婚するまでに一定期間(3年以上)が経過している場合で、一定の収入または資産がある場合または見込まれる場合
※「日本人の配偶者等」の在留資格を保有している方と「永住者の配偶者等」の在留資格を保有している方とで審査基準に違いはありません。
※別居期間は婚姻〜離婚するまでの期間に含まれません。
離婚後、子供(日本人の実子)の親権を持ち、日本でその子供の面倒をみる必要がある場合
※ 婚姻期間が3年未満でも変更は可能です。
※ 子供の現在の国籍は問いませんが、子供の出生時に父または母が日本国籍を保有している必要があります。
※ 一定の収入または資産があれば許可の可能性が高まりますが、離婚後一時的に生活保護を受けている場合でも変更は可能です。
2.就労ビザを取得する
現在の在留資格を「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ変更します。
但し、学歴・職歴など各就労ビザで要求されている許可要件をクリアできる外国人のみが選択できる方法です。また、高学歴・高収入・日本の大学等を卒業している方は「高度専門職ビザ」へ在留資格を変更することができ、離婚後短期間で永住申請を目指すことも可能です。
自ら会社を設立することが可能な経済的に余裕のある方は、就労ビザの1つである「経営・管理ビザ」へ在留資格を変更することも可能です。
なお、現在の在留資格「日本人の配偶者等」・「永住者の配偶者等」は、就労活動に制限はありませんが、就労ビザ取得後は、付与されたビザで認められた範囲内でのみ就労が可能となるため、単純労働(アルバイト)を行うことはできなくなります。
3.留学ビザを取得する
学費を工面することができれば、日本の大学・専門学校へ入学し「留学」ビザへ在留資格を変更することが可能です。離婚後、学歴の問題から就労ビザへ在留資格を変更することができない場合には、日本の大学や専門学校を卒業後に就労ビザを取得することも可能です。
なお、学校に在籍中は資格外活動許可を得れば、就労時間に制限はありますが、単純労働(アルバイト)を行うことができます。
5.外国籍の元日本人の方のビザ取得
元々は、日本人だった方(日本国籍を持っていた方)で、国際結婚などで海外在住となって外国籍(米国市民権など)を取得した方が、日本に帰国して中長期に居住したい場合は、どのような方法があるのでしょうか?
元々は日本国籍をお持ちだった方も外国籍を取得することで日本国籍を喪失しているため、日本に帰国して中長期間に滞在するためには母国であるとはいえ外国人ですので在留資格(ビザ)が必要になります。この場合には「日本人の配偶者等」という在留資格(ビザ)を取得することになります。
詳しくは、外国籍の元日本人の方のビザ取得の記事で解説しています。
参考記事