永住許可の取得方法
永住許可は,在留資格を有する外国人が永住者への在留資格の変更を希望する場合に,法務大臣が与える許可であり,在留資格変更許可の一種です。
※最初から永住許可の資格で日本に上陸すること(海外からの呼び寄せ)はありません。
在留資格「永住者」は,在留活動,在留期間のいずれも制限されないという点で,他の在留資格と比べて大幅に在留管理が緩和されます。このため,永住許可については,通常の在留資格の変更よりも慎重に審査されており,一般の在留資格の変更許可手続とは独立した規定が特に設けられています。
1.永住ビザ(永住許可)とは
永住ビザ(永住許可)は、日本に中長期の在留許可を得て一定期間以上住んでいる外国人が申請することができます。許可を得れば期限なしに在留することが可能になり、一定期間毎の更新も不要です。特に就労ビザの方の場合は、許可を受けた職種でしか働くことはできないので、転職や職務内容を変更しようと思っても、自由にはできません。入管への変更届出や職種が変わるような場合には在留資格変更の許可が必要です。しかし、永住許可を受ければ、自由に転職もできますし、会社の経営もできるようになります。風俗営業も適法である限り可能です。
また、永住申請の際には、配偶者や子供も同時に永住申請により許可を取得できる可能性があります。永住許可がおりなくても、「永住者の配偶者等」や「定住者」となりことができますので、就労などの活動の制限がなくなります。
また、日本人の配偶者などの身分系の在留資格の方の場合に、永住許可を受けると一定期間毎の更新が不要になります。ただ、仕事については、元の在留資格においても自由に従事できますので、仕事上でのメリットはないように思います。
永住申請は、外国人が入管に申請する許可としては最後のものになります。そういうこともあるかと思いますが、永住の審査は、時間もかかりますし厳しい審査となっています。
1.永住許可の要件
永住許可の要件については、以下のように3つの要件が規定されています。
※永住許可に関するガイドライン(令和5年4月21日改定:出入国在留管理庁)より。
1.永住許可の要件
(1)素行が善良であること
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ア 「原則として引き続き10年以上本邦に在留」していること。ただし,この期間のうち,
就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格を
もって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税,公的年金及び公的医療
保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)
を適正に履行していること。
ウ 現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2
に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
ただし、入管としては、「当面、在留期間「3年」を有する場合は、「最長の在留期間を
もって在留している」ものとして取り扱う」としていますので、3年の在留許可を受けていれ
ば申請できます。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
※ ただし,日本人,永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には,(1)及び
(2)に適合することを要しない。また,難民の認定を受けている者の場合には,(2)
に適合することを要しない。
(4)また、実務上、身元保証人が必要です。
2.「原則10年在留」に関する特例
永住許可を得るには、原則として引き続き10年以上本邦に在留していることが必要ですが、以下のような特例があります。
(1)日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実体を伴った婚姻生活が3年以上継
続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上
本邦に継続して在留していること
※「子」は実子・普通養子・特別養子を含みます。
(2)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること
(3)難民の認定を受けた者の場合,認定後5年以上継続して本邦に在留していること
(4)外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者
で,5年以上本邦に在留していること
※「我が国への貢献」については、「我が国への貢献」に関するガイドラインの記事で詳し
く解説していますので、興味のある方はご参照ください。
(5)地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再
生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において,出入国
管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下
欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号の
いずれかに該当する活動を行い,当該活動によって我が国への貢献があると認められる
者の場合,3年以上継続して本邦に在留していること
(6)出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める
省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点
以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ 3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準と
して高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有して
いたことが認められること。
(7)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者で
あって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を
基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点
数を有していたことが認められること。
(7)高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者
であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準
として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有
していたことが認められること。
(8)特別高度人材の基準を定める省令(以下「特別高度人材省令」という。)に規定する
基準に該当する者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「特別高度人材」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基
準として特別高度人材省令に規定する基準に該当することが認められること。
(注) 前記2(6)アの「高度人材外国人」とは、ポイント計算の結果70点以上の点数を
有すると認められて在留している者が該当し、前記2(7)アの「高度人材外国人」
とは、ポイント計算の結果80点以上の点数を有すると認められて在留している者が
該当し、前記2(8)アの「特別高度人材」とは、特別高度人材省令に規定する基準
に該当すると認められて在留している者が該当する。
3.永住申請での身元保証人
「身元保証人」とは、永住申請に限らず、日本人の配偶者等などの身分系の在留資格の申請の場合に必ず必要になります。従いまして、「日本人の配偶者等」などの身分系の在留資格を持っている方が永住申請する場合は、既に身元保証人がいるはずですので、その方に引き続きお願いすることになると思います。一方、就労系の在留資格の方は、会社の上司や友人、知人でも構いませんが、会社の上司に身元保証人になってもらうことが多いかもしれません。
ただし、身元保証人になれる人は、日本人(日本国籍を有する人)または永住者でないとなれません。永住する人の身元を保証するのですから、自分が日本人か日本に永住できる人でないと保証できませんから。
永住申請での身元保証人は、債務の連帯保証人とは責任範囲がまったく異なり、そのような大きな責任は負いません。
入管に提出する身元保証書には、「本人が本邦に在留中、本邦の法令を遵守し、公的義務を適正に履行するため、必要な支援を行うことを保証する」となっており、身元保証人は、これに署名をして提出するのですが、身元保証人としては、外国人が必要な届出やそのほかの法令を守ることと、納税、健康保険の保険料や年金保険料の支払いなどの公的義務を滞納などしないように適正に行うように支援するのがその責任範囲ということになります。
実は、「日本人の配偶者等」の在留資格の申請で提出する身元保証書には、@滞在費 A帰国旅費 B法令の遵守の事項について保証するとなっており、永住申請時の身元保証人とは保証範囲の記載内容が異なっています。もちろん、この場合も債務の連帯保証人とは責任範囲がまったく異なり、そのような大きな責任は負いません。
「日本人の配偶者等」の在留資格の申請の場合は、滞在費と帰国旅費と具体的に金銭面の記載があり、身元保証人は、外国人(つまり自分の妻・夫や日本人配偶者との間の子供ですが)日本に在留するのに必要な生活費なども専業主婦であったり子供であったりと本人の収入が無い(少ない)など、必要な場合は負担する義務を負います。
4.永住許可に必要な年収額の目安
「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」について、永住許可に必要な年収の基準額は、公表されているわけではありません。年収額に関しては、確かなことは言えませんが、ケースバイケースで事情を勘案しての判断ということのようです。 ただし、一般的には最低年収300万円以上必要と考えられており、扶養者が1人増えるにつき、70万円程度必要と考えられています。年収300万円を下回ると許可される可能性は低くなると考えたほうがよいと思います。
最近では、年収要件は従前より厳しく審査されています。
5.貯金額・資産の資料
出入国在留管理庁のホームページには、「直近(過去3年分)の申請人及び申請人を扶養する方の所得及び納税状況を証明する資料」の提出物のひとつとして、
・預貯金通帳の写し 適宜
・上記aに準ずるもの 適宜
のいずれかとなっています。あくまで所得を証明するためのものです。
なお、通帳の写しは、名義、銀行印があるページ、最終残高のページが必要です。
Web通帳の画面を印刷したもの(名義人・支店名・口座番号・残高が映っているもの)でも構いませんが、加工できないものを印刷したものでないとだめです。(Excelなどの印刷は不可です)
他には、預金残高証明書でも構いません。
残高が少ない場合に、提出すべきかどうか迷うところですが、残高10万円以上あるのであれば提出したほうが良いでしょう。
なお、預金残高を多く見せたいがために、いわゆる見せ金のようなことはしてはいけません。残高は多いほうがいいと言われて、やらないように注意してください。むしろ、地道に給料から貯金を増やしているほうが誠実さが伝わるのではないでしょうか。
6.納税義務等の公的義務を守っていること
@所得税・住民税・法人税などの税金、A厚生年金・国民年金などの年金、B健康保険の納税、保険料納入が適正に行われており未納でないことが必要です。適正にというのは、納付期限を守っているかどうかですので、税金や年金を支払っていない場合、または、支払ってはいても納付期限までに支払っていない場合には不許可になりますので、完全に支払ってから一定期間を置いて申請することになります。
参考記事